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東京高等裁判所 平成12年(行コ)116号 判決 2000年9月28日

控訴人

右訴訟代理人弁護士

中村洋二郎

被控訴人

小千谷税務署長 高木勉

右指定代理人

藏重有紀

磯野宏

田口勉

永塚光一

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が平成七年三月一三日付けで控訴人の平成三年分の所得税についてした更正決定(以下「本件更正処分」という。)並びに過少申告加算税賦課決定(以下「本件賦課決定処分」という。)の各処分(以下あわせて「本件課税処分」という。)の全部を取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

控訴棄却

第二事案の概要

控訴人は、平成三年に所有地を売却して得た譲渡所得につき、右譲渡は控訴人が連帯保証していた有限会社Aの債務の弁済に充てるためにしたものであり、Aは事実上倒産状態で求償権の行使ができないことになったものであるから、右譲渡所得は所得税法六四条二項により分離長期譲渡所得の計算上なかったものとみなされるものであるとして、原判決別表一のとおりの確定申告をしたところ、被控訴人は、右規定の適用を認めず、同表の更正・決定欄記載のとおりの本件課税処分をした。控訴人はこれを不服として被控訴人に対し異議を申し立てたが、被控訴人がこれを棄却したので、国税不服審判所長に対し右棄却決定に対する審査請求をしたが、同所長はこれを棄却した。そこで、控訴人は本件課税処分の取消しを求めて本訴を提起した。原審は、売却代金の一部については控訴人がAに対しこれを貸し付けた後、Aがその借受金をもって債務を弁済したものであり、したがって右土地の譲渡は、控訴人が保証債権履行のためにしたものとは認められないとし、また、右売却代金の一部についてはこれをもって控訴人がAの債務を代位弁済したものとみとめられるが、これについても、本件課税処分当時、控訴人がAに対して求償権を行使したとしてもその目的が達せられないことが確実な状況まで至っていたものと認めるには不十分であるとして、同法六四条二項の適用を認めず、控訴人の請求をいずれも棄却したので、控訴人がこれを不服として控訴した。これが本件事案の概要であるが、そのほか原判決の「事実及び理由」の「第二 事案の概要」欄記載のとおりであるから、これを引用する。

第三当裁判所の判断

一  当裁判所も、控訴人の本件請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり改訂するほかは、原判決の理由説示と同旨であるからこれを引用する。

1  原判決書二四頁一行目の「受領書」の次に「(乙一三)」を加え、同頁二行目の「Aに対し」から同頁五行目の「その後」までを「本件第二債務の弁済金として一億一〇〇五万円を領収した旨のA宛ての受領書(乙一四)を作成し、これを控訴人が受領していること、<5>同日当時、控訴人はAの代表者の地位にあったことが認められ、これらの事実に、前記のとおり、控訴人が右売却代金の一部をもって本件第二債務につき一億一〇〇五万円を弁済したことについては当事者間に争いのないことを総合すると、控訴人は、本件第一土地の代金の残額全てをAに貸し付け」に改める。

2  同頁一一行目の「実質的には保証債務履行のためになされたものであるから」を「平成二年一〇月に取り下げられた競売手続の続行的な意味合いを持ち、競売手続に代わるものとして、実質的には本件第一債務及び本件第二債務の保証債務履行のためになされたものであるから」に改める。

3  同二五頁七行目の「Aに対して」から同二六頁三行目末尾までを「ともにA宛ての領収書を発行しているところ、Aは、本件第一土地の代金の内事実上新潟縣信に対する弁済の一部に充てた分についてだけ控訴人からの長期借入金として経理処理し、主債務者であるA自身が返済したという法形式を選択したものであり、控訴人及びAがこのような方法を選択したのは、Aが今後営業を継続していく場合金融機関から融資を受ける際に有利である等の事情があることも想定できることを合わせ考えると、右一連の処理は、関係当事者間において意識的に選択されたものというべきであって、単に形式的便宜的なものということはできない。なお、この点に関し、Aの税務会計を担当していた高橋税理士の陳述書(甲一七)中には、財務諸表論に「求償債務」等の勘定科目がないため、悩んだ末、やむを得ず便宜的にAの「借入金」として経理処理をしたにすぎない旨の記載部分があるが、前示のとおり、本件第一債務についての弁済についてはそのような扱いをしていないのであるから、これをもって前記判断が左右されるものではない。」に改める。

4  同二九頁一一行目から同三〇頁一行目にかけての「現在所有する」を「当時所有していた(甲一八)」に改める。

5  同三〇頁六行目の「したがって、」から同頁一〇行目末尾までを「この点に関し、控訴人は、平成九年八月に競売された一村尾土地の価格は約二一一五万円にすぎないのに、乙第二二号証中の建設仮勘定科目に造成費として計上されている額は八二六七万円(甲四)にも及んでいる点に照らせば、これが右の土地にかかった造成費用であると認め難いことは明らかである旨主張するところ、原審証人乙も、他の土地の埋め戻しにかかった費用の分も全て一村尾土地の造成費用として帳簿処理したものであると証言し、競売手続における平成九年六月時点の一村尾土地の最低売却価額は二一一二万五〇〇〇円であったことが認められる(甲一九)。しかし、右土地の造成がされたというのは平成二年であって(乙二二、原審証人乙)、近時の地価の動向を考えれば、当時の時価は右の額よりは相当高いものであったはずであるし、控訴人としては一村尾土地を山土を採取後墓地、別荘地、福祉関係の施設地として売却することを考えていたというのであり(原審控訴人本人)、しかも控訴人は原審証人乙が費用をかけて埋め戻したと証言する別の土地についてこれを具体的に特定明示することも、これを裏付けるべき客観的な証拠も全く提出しないことに照らすと、これらをもって右造成費が経費として計上されるべき埋め戻し費用であると認めることはできないといわなければならない。控訴人の右主張は採用することができない。」に改める。

二  よって、控訴人の本件請求をいずれも棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法六七条、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小川英明 裁判官 近藤壽邦 裁判官 川口代志子)

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